インプラントによる歯科治療とは about implant
『インプラントによる歯科治療』は、歯を失ったときにインプラント(人工歯根)と人工歯で補い、自分の歯の代わりとする治療法です。
まず、歯のない部分の顎の骨に、人体になじみやすい金属『チタン』でできたインプラントを埋め込みます。骨とインプラントが結合して一体化するため、緩んだり外れたりすることはありません。
その上に、白い陶材『セラミック』でできた人工歯を装着します。天然歯に近い色調や光沢があるので、自然で美しい仕上がりになります。
機能性と審美性を備えているというメリットがあるため、入れ歯やブリッジ(両隣の歯を支えとして人工歯を入れる治療法)に代わる治療法として主流になってきており、最近ではインプラントの埋入を行なう歯科医院も治療を受ける方も増えています。
しかしメリットだけではなくデメリットもあるので、治療をご検討されている方は、事前にそれらをきちんとご理解いただくことが大切です。
- インプラント埋入治療のメリット
-
- 顎の骨とインプラントが固定されるので、硬いものでも力を入れてしっかりと噛めるようになる
- 人工歯が自分の歯のような質感なので、自然に仕上がる
- 入れ歯のように取り外すタイプの人工歯ではないので、口の中で違和感がない
- ブリッジのように健康な歯を削る必要がない
- インプラント埋入治療のデメリット
-
- 骨にインプラントを埋め込むための外科手術が必要になる
- 骨とインプラントが結合するまで3~6ヵ月かかるので、治療期間が長くなる
- 自費診療なので一般的に1本25~50万円ほどかかり、費用が高額になる
- 心臓病や高血圧などの全身疾患があると治療を受けられないことがある
- 自分の歯のときよりも丁寧なケアが必要になる
インプラントによる歯科治療をご検討の方は、まずはお気軽にご来院ください。症状を拝見して精密検査を行ない、インプラントの埋入手術ができるかどうか診断します。
治療を希望されても、症状やライフスタイルによっては入れ歯やブリッジの方が適していることもあるので、ご相談のうえでほかの治療法をご提案します。
インプラント埋入治療と
ほかの治療との違い
difference
失った歯を補う治療法には、インプラント埋入のほかにもブリッジや入れ歯があります。
それぞれに違いがあるので、以下のようにさまざまな視点から比較し、どれが自分に適しているかを検討することが大切です。
噛む力
- インプラント自分の歯とほぼ同じ
- 入れ歯総入れ歯は自分の歯の約10~20%、部分入れ歯は約30~40%
- ブリッジブリッジをかける歯の状態によるが、自分の歯の約60%
噛み心地
- インプラント自分の歯とほぼ同じ
- 入れ歯噛む力が弱いので、大きなものや粘着性のあるものが食べにくい
- ブリッジ支えにする歯が健康であれば、自分の歯とあまり変わらない
見た目
- インプラント自分の歯とほぼ同じ
- 入れ歯保険のものは入れ歯であることがわかる
- ブリッジ違和感が少なく、セラミックにすれば自然に仕上がるが、自費になる
ほかの歯への
負担
- インプラント健康な歯を削る必要がないため、負担がかからない
- 入れ歯部分入れ歯は留め金をかける歯に負担がかかり、歯の寿命を縮めることになる
- ブリッジ両隣の健康な歯を削る必要がある
味覚
- インプラント自分の歯とほぼ同じ
- 入れ歯保険のものは熱や味を感じにくい
- ブリッジ自分の歯とほぼ同じ
骨吸収(顎の骨量が少なくなる現象)
- インプラント骨に刺激が届くので、骨が吸収されにくい
- 入れ歯歯を失った部分から骨が吸収がされはじめる
- ブリッジ歯を失った部分から骨が吸収がされはじめる
耐用年数
- インプラントきちんとケアできていれば30年ほど使える
- 入れ歯平均7~8年ほどで、歯肉が痩せて合わなくなる
- ブリッジ平均7~8年ほどだが、顎骨の吸収の程度によって変わる
治療期間
- インプラント骨とインプラントの結合を待つので長期間になる
- 入れ歯複雑なものでなければ短期間ですむ
- ブリッジ複雑なものでなければ短期間ですむ
治療費
- インプラント自費なので高価になる
- 入れ歯保険のものであれば低価格ですむ
- ブリッジ保険のものであれば低価格ですむが、審美性を重視してセラミックにすると自費になる
治療後の
問題点
- インプラント安定感に優れているが、インプラント周囲炎(歯周病のような病気)に注意する必要がある
- 入れ歯歯肉が痩せて合わなくなるので、その度に調整が必要になる
- ブリッジ歯肉の状態によってはつくり直す必要があり、支えにする歯が虫歯になったら再治療する必要がある
インプラントによる歯科治療の流れ flow
インプラントによる歯科治療は、一般的に以下のような流れで行ないます。
こちらは一般的なものなので、症状などによっては下記の内容とは異なる場合があります。(※)
不安な点やもっと詳しく知りたいことなどがある方は、お気軽にお尋ねください。
カウンセリング
患者さまのお悩みやご希望などをお聞きします。また、治療の内容・期間・費用など、治療に関する概要をご説明します。 この段階では治療を受けることを決めていただかなくて結構ですので、カウンセリングをもとにご検討ください。
検査、CT撮影、治療計画の立案
レントゲン撮影、CT撮影、噛み合わせの検査、顎の骨の質や量の検査などを行ない、お口の中の状態を把握します。検査結果から総合的に診断して治療計画を立てます。検査の結果、インプラント埋入手術に適さないと判断した場合は、ほかの治療をご提案します。
インプラントの埋入手術
歯肉を切開して、顎の骨にインプラント(人工歯根)を埋め込みます。手術にはインプラントの先端を歯肉から出したままにする『一回法』と、インプラントの先端まで歯肉で覆う『二回法』があるので、症状に合わせてどちらかを選びます。
治療開始
顎の骨の状態によって異なりますが、インプラントと骨の結合を3~6ヵ月ほど待ちます。その期間中は仮歯を使うことができるので、歯がないという状態を避けられます。
歯肉の切開(二回法のみ)
二回法を行なった場合は、再び歯肉を切開してインプラントの先端を露出させ、インプラントと人工歯を連結させる『アバットメント』という部品を装着します。
人工歯の作製・装着
仮歯を装着して細部を調整し、装着感や審美性に違和感がなければ人工歯をつくって装着します。その後、適切なケアや定期検診などについてご説明します。
定期検診
2~6ヵ月に一度、定期検診を受けていただきます。歯磨きなど日頃のケアに取り組んでいただくのはもちろん、継続的に定期検診を受けていただきます。この際にインプラント周囲炎(歯周病のような病気)の有無、歯並びや噛み合わせ、顎の異常、人工歯の緩みなどの確認を行ないます。
定期検診を受けないとお口の健康が損なわれ、インプラントを長期間使うことができなくなってしまいます。歯科医師の指示に従い、必ず定期検診を受けましょう。
インプラントによる歯科治療のリスク・副作用
- 機能性や審美性を重視するため自費診療(保険適用外)となり、保険診療よりも高額になります。
- インプラントの埋入にともない、外科手術が必要となります。
- 高血圧症、心臓疾患、喘息、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓や肝臓の機能障害など全身疾患のある方は、治療を受けられないことがあります。
- 手術後、痛みや腫れが生じることがありますが、ほとんどの場合1週間ほどで治ります。
- 手術後、歯肉・舌・唇・頬の感覚が一時的に麻痺することがあります。また、顎・鼻腔・上顎洞(鼻腔の両側の空洞)の炎症、疼痛、組織治癒の遅延、顔面部の内出血が生じることがあります。
- 手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気副作用が生じることがあります。
- 手術後、喫煙や飲酒をすると治療の妨げとなるので、1週間は控えてください。
- インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、噛み合わせ、歯磨きの技術、メンテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
- 毎日の清掃が不十分だった場合、インプラント周囲炎(歯肉の腫れや骨吸収など)を引き起こすことがあります。